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Peteの概要

4.Pete(ピート)の開発ストーリー

はじまりはインタビュー

1996年、私(内田)は、障害者就業に関する調査の仕事を引き受けました。

それまで、高齢者のIT利用に関する仕事は担当していましたが、障害者がパソコンをどうやって使い、仕事をするのか、何の予備知識もありませんでした。そこで、私は在宅就業をしている何人かの障害者の方に直接お目にかかってインタビューさせていただくことにしました。

そこには、私の想像を超えた世界がありました。

ある人は、口にくわえた棒(マウススティック)で、またある人は自由に動かない右手の親指で、一番すごい人は足の指でキーをひとつずつ押し、大変な苦労をしてパソコンを使っていました。それだけの苦労をしても、自由に文章が作れ、仕事ができることはすばらしいというのがインタビューさせていただいた全員の意見でした。

このインタビューは、私に強烈な印象を残しました。それは、ノーマライゼーションにITが貢献できるすばらしい可能性と、現実には適切なソリューションが存在しないという深刻な問題の認識でした。お目にかかった人たちは皆、パソコンで1文字を打つのに大変な努力をしていました。そのバイタリティに感動すると同時に、彼らがもっと簡単にパソコンを使える方法はないのか、と強く疑問を感じました。

発見!おタク的解法

とは言っても、障害者のパソコン入力支援の解決方法はすぐには思いつきませんでした。

答えは、思わぬところから見つかりました。

1997年頃、アメリカのPDA「Pilot」が国内に紹介されて、一部のITマニアの間で注目を集めました。後に「Palm」と改称して日本でも一台ブームになったPDAですが、PDAおタクだった私は、さっそくPilotを購入して使ってみることにしました。

当時のPilotには日本語環境がなかったのですが、私が尊敬する元祖Palmおタク:Hacker Dude-sanこと山田達司さんがJ-OSという日本語化キットをフリーで公開され、私も使わせてもらうことにしました。その山田さんのホームページに、次のようなことが書かれていました。(私の記憶頼りなので不正確かも知れませんが・・・)

「ソニー・コンピュータ・サイエンス研究所の増井さんがPOBoxというPilot用の日本語入力ツールを公開しています。ぜひ一度試してみてください。目からウロコが落ちますよ」

興味を引かれた私は、増井さんのホームページから「POBox」をダウンロードして使ってみることにしました。初めて使ってみたPOBoxの印象は・・・すごい!!!キーボードがないため面倒なPilotの日本語入力が、予測入力によって見違えるほどスピーディになるのです。うろこが目からばらばら落ちる音が聞こえました。

同じ頃、私は元祖支援技術おタクの畠山卓郎さん(当時は横浜市総合リハビリテーションセンター勤務)にお話をうかがう機会がありました。肢体不自由者のパソコン利用と支援技術についてお話をうかがっているうちに、キーボード操作が困難で日本語入力に苦労している障害者にとって、もしかするとPOBoxの予測入力が役立つのではと感じ、帰り際にPilotを取り出して「こういうソフトがあるんですけど、障害者支援に役に立たないでしょうか」と尋ねてみました。

POBoxを一目見た畠山さんの目の色が、見る見るうちに変わりました。「内田さん、これはすごい、これは役立ちますよ!」

スーパーインタフェース研究者・増井さん

畠山さんは褒めてくれましたが、POBoxは私が作ったものではありません。POBoxをモデルに障害者の入力支援ソフトを作るため、開発者の増井さんに連絡をとることにしました。

ホームページに掲載されていたかなり迫力ある顔写真に気押されつつ、増井さんに開発の許可のお願いと、ぜひ増井さんにも協力していただきたいというメールを送りました。

すぐに、予想以上にありがたい返事が返ってきました。「こういうことにPOBoxを応用してもらえるのは大変うれしい。どんどん進めてください。いつでも相談に乗りますので、研究所にも一度いらしてください」という趣旨でした。お言葉に甘えて、すぐにソニーCSLにおじゃましたところ、増井さんが開発したすばらしくオタッキーなインタフェースの数々を見せていただき、障害者にインタビューした時とはまた別の衝撃を受けました。

増井さんは、ヒューマンインタフェースの分野では超有名なスーパー研究者なのですが、当時の私はまったくそのような有名人とは知らなかったのです。

テクノエイド協会が初めてソフトウェアに助成!

こうして、増井さんのご了解のもと、POBoxをベースにした障害者支援ソフトの開発を始めることになったのですが、当時の私は独立して会社を興したばかりで、開発資金の当てがありませんでした。そこで、財団法人テクノエイド協会の助成制度に応募することにしました。

テクノエイド協会は、様々な障害者支援装置の開発を助成していますが、そのほとんどが車椅子をはじめとする「もの」の開発に対する助成で、申請した時にも「これまで、ソフトウェア開発に助成したことはないですねえ」というお話でした。それでも企画書を大変評価していただき、「初めてのケースなのでぜひがんばってください」という激励とともに、2年間の開発助成を決定していただきました。

「Pete開発WG」というドリームチーム

Peteの開発を始めるに当たって、障害者のニーズ、支援技術、インターフェイス技術それぞれの専門家から十分なアドバイスをいただける体制が必要だと感じました。そこで、開発チームとは別に、Peteのコンセプトデザインや機能検証をしていただく専門ワーキンググループを作ることにしました。

メンバーは、畠山さん、増井さん、そしてITによる障害者支援のパイオニアである株式会社ユーディットの関根さん、支援技術の普及・販売を精力的に進めておられた株式会社パシフィック・サプライの日向野さんにお願いしました。この方々は、それぞれの活動分野では文句なしの第一人者。まさにドリームチームでした。しかしこのドリームチームはさすがに手ごわく、Pete開発途中で何度も辛口のコメントをいただき、頭を抱えることになりました。

なかなか動かなかったPeteアルファ版

Peteはウィンドウズ上で動作する予測入力ソフトですが、技術的に見ると大変難しいポジションにあるソフトウェアです。Peteは外部スイッチ等からの入力信号をウィンドウズに代わって受け取り、IMEともやりとりしながら変換候補を選び出し、最後には確定した文字列を様々なアプリケーションソフトに渡す必要があります。つまり、Peteが正常に動作するには、ウィンドウズ上の様々な要素の間に入り込んで、それらのやりとりを仲介し制御する必要があります。

このため、特に開発当初は、Peteがなかなか十分に動かず、開発の中心を担っていたヒューメイアの野間さんは大変苦労していました。ウィンドウズは、OSとIME、アプリケーション間のやりとりが相当複雑な構造になっているため、安定的に動作しなかったり、基本レベルはクリアした後も部分的にうまく動かない点が残ったりします。この問題は、Peteの公開後も尾を引き、Peteの改良では、こうした複雑なポジションのために発生する様々な不具合をいかに解消していくかが大きなテーマになっています。

パソボラ・カンファレンスで奇跡?のデビュー

Peteが完成に近づいた2000年10月、パソコンボランティアの一大イベントである「パソボラ・カンファレンス」にブースを出し、Peteのデモを行なうことになりました。

Peteは障害者向けソフトですが、その普及にはパソコンボランティアの協力が欠かせません。しかし、当時はパソボラとの接点はほとんどなく、Peteもまったく無名でした。

展示当日、はじめのうちPeteはまったく注目されませんでしたが、ITに詳しい何人かのパソボラの方々がPeteの予測入力機能を見て大いに感心してくれました。すると、次第に口コミで評判が広がり、午後になるとPeteのデモ機の前には人だかりができるようになりました。

Peteは、支援技術開発やパソコンボランティアの猛者たちに強い印象を残したのでした。

いよいよ公開!広がり続けるPeteの輪

Peteの開発が一段落し、「完成版」として公開にこぎつけたのは2001年6月。ちょうど、20世紀から21世紀に暦が移る時期に登場したソフトウェアということになります。私は、Peteには21世紀の支援技術のひとつのモデルになってほしいと願っています。その意味では、大変象徴的なタイミングで世に出すことができたと言えるでしょう。

Peteはソースも公開しています。完成版公開後の2001年には、「Pete改造・改良コンテスト」と銘打って、技術ボランティアの方々からPeteの改造プログラムを募集しました。力作ぞろいの中、最優秀賞に輝いたのはPeteの設定変更をウィザード化する「猫の手」というプログラムで、その後、Peteの付属ソフトとして採用させていただきました。

全面リニューアルで新しいWindows環境に対応

Ver.1の公開から10年が経過し、ウィンドウズ環境も大きく変わりました。2009年から2011年にかけて、WindowsVista、Windows7に対応すべく、Peteプログラムの全面リニューアルを進め、2011年10月にPete3.0として公開いたしました。

おかげさまで、Peteの登録利用者1000人を超えて増え続けています。障害者支援ソフトウェアとして、大きな支持をいただいていると言えるでしょう。今後も、より多くの人々に手軽なパソコン操作支援ソフトとして活用していただけるよう、磨きをかけていきたいと思います。

 

■Pete開発チーム: 

アライド・ブレインズ株式会社

合資会社ヒューメイア  

株式会社ユーディット

株式会社スカイナラ(Ver.1.56)

 

■Pete2.0開発チーム: 

アライド・ブレインズ株式会社

株式会社スカイナラ  

有限会社マイト

 

■Pete検討委員会(WG)メンバー(敬称略、所属は当時)

関根千佳 (株式会社ユーディット)

畠山卓朗 (横浜市総合リハビリテーションセンター)

日向野和夫 (パシフィックサプライ株式会社)

増井俊之 (ソニーコンピュータサイエンス研究所)

 

■Peteリニューアル検討委員会(WG)メンバー(敬称略、所属は当時)

岩渕正樹 (坂戸パソコンボランティア)

梅垣正宏 (株式会社ユーディット)

菅野理恵 (国立病院機構箱根病院)

畠山卓朗 (早稲田大学)

日向野和夫 (川村義肢株式会社)

 

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